恒星たちの夜

2018年06月01日

『イナズマイレブン』二次創作小説 カップリング要素無し ブレイク組 2018年5月15日

「きっと、十年先も変わらない」

河川敷で過去と未来を思う三人の話



「豪炎寺がさ、沖縄に行っちゃったときあったろ」
 円堂は河川敷に寝転がりながら言った。練習を終え火照った身体を、夜風が優しく撫でていく。空には星が輝いていた。
 そんなこともあったな、と豪炎寺は荒い息を整えながら思い出した。
「あの時は、迷惑かけたな」
 結果として妹は無事だった。しかし自分が迷惑をかけた事に変わりはない。チームには勿論、監督にも嫌な役を押し付けてしまった。すまなかった、と念押しのように小さく呟くと、隣で鬼道が笑う気配がした。
 豪炎寺が、なんだ、と小突くと、「いや、俺も思い出してな」鬼道はゴーグルを外し、溜まった汗を拭った。
「円堂とキャラバンの上に寝転がって、星空を見上げたことがある。丁度、今みたいに。お前のことを話していた」
 ひんやりと冷たいのに、三人の間に流れる風はどこまでも優しかった。己の心臓が脈打つ音を感じながら、豪炎寺はチームメイトの言葉に耳を傾ける。
「もうお前とは会えないんじゃないかと思った」
 鬼道のそれは、独白に似ていた。豪炎寺は小さく息を吐くように、そうか、と呟き目を閉じる。言葉を操ることは苦手だった。それでも、この二人には伝わってしまうのだから、いつまで経っても甘えてしまう。
 豪炎寺だって、鬼道と同じ事を考えた。仮に再び会えたとしても、もう関わらない方が良いと思っていた。
「でもさ、こうしてまた一緒にサッカーをやってるじゃないか」
 そうだろ? 沈黙を破るのはいつだって円堂だ。きっと、得意の笑顔を浮かべているのだろう。顔を見るまでもない。それくらい、豪炎寺には手に取るように分かった。ゴーグルをした鬼道の表情だって、それなりに読み取れるはずだ。
「二人ともさ、これからもサッカー続けるだろ?」
 尋ねられて、豪炎寺と鬼道は頷いた。昔から、純粋にサッカーが好きだった。勿論苦しいこともあった。けれどそれ以上に、新たな仲間に出会うたび、もっと好きになっていった。
 この先何が待っているのだろう。期待と、不安と、ほんの僅かな寂しさを抱えている。永遠などどこにもないから、今ある幸せが、果たして十年後に存在するかなど、世界の誰もが証明できないのだ。
「じゃあ、きっと大丈夫だな。サッカーさえ続けてれば、俺たちはまた会える」
 なんだそれは、と鬼道が吹き出した。豪炎寺も思わず笑いながら、けれど、何故だろう、涙が出てきたのを慌てて拭った。
 三人で見上げる星空が、どこまでも続いているような気がしたのだ。十年後も、二十年後も、百年先も。

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