二次創作

基本腐なので注意してください

御影密の覚醒には時間がかかる。眠りにつくのは一瞬だけれど、目を覚ますのには随分時間を要するのだ。マシュマロを与えて、肩をつついて、なんとか浮上した意識を保たせる。やっと起きたと思ったら、やっぱり眠気に敵わずに、再び眠ってしまうのが常だった。
そういうわけで、御影密が目を覚ましてすぐに意識を覚醒させることはほとんど無いことなのだ。
だから、「有栖川が倒れた」と顔を真っ青にして丞が知らせた時、文字通り飛び起きた密は、後にも先にも例がない。
さて、天才にはドレスコードがある。それは、えてして生涯を短く終える、ということだ。短命とはその有り余る才能への対価なのかもしれないけれど、あくまで「自称」天才だからだろうか。有栖川誉は二十七クラブにめでたく追加されかけて、しかしなんとか一命を取り留めたらしい。...

嘘つき! 密は叫び出しそうだった。汗が眉間を伝っていくのも気にせず、密はぐっと口の中の布を噛んだ。一目見て分かったのだ。アレは、神様なんかじゃない! 今すぐにでも、自分を拘束している村人達に真実を教えてやりたい気分だ。しかし猿轡を噛まされた口では、息をするのもやっとだった。無理な角度で拘束された腕がきりきりと痛んでいる。必死にもがいたから、縛られた箇所は赤くなって熱を持っていた。
「狐様。贄を捧げます」
背中をぐいぐい押されて、密はつんのめりそうになりながら進み出た。つやつやと板間を光らせている堂の奥には、金色の壁紙が貼られている。周囲よりも一段高くなっているその場所には、本来仏が収まっているはずなのだ。だというのに、そこに仏の姿はない。
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トロンプ・ルイユ

2018年06月01日

「しにたい」
聞き間違いかと思った。麗らかな日差しと、美しい自然とが見事に調和した景色には、まるで似合わない言葉だったからだ。丁度ワタシたちが目指していた湖に辿り着いた時のことであった。どうか聞き間違いであってほしいと思いながら、ワタシは芝生に座った身体をそのままに、首だけを動かして、隣で膝を抱えている密くんを見た。旅に出てからもう随分と経つけれど、密くんがこんな風に弱音を吐くのは初めてのことだった。
「なにか、あったのかい?」
ワタシは努めて、普段と変わらぬ調子で尋ねた。
「......ううん、別に」
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不変の祝福

2018年06月01日

密の予想通り、お土産の天体キャンディーを受け取った誉は「詩興が湧いた!」と叫んだのだった。耳を抑えながら、密は玄関で早速お土産を渡してしまったことを後悔する。もう少し後にすれば良かったかもしれない。
けれど、やはり早々にお土産を手渡す運命だったのだろう。どういうわけだか、誉は仁王立ちになって玄関で待ち構えていたのだ。ドアを開けてすぐに、仁王立ちをしている高身長の成人男性と鉢合わせた時の気持ちを考えてみてほしい。思わず密はびくりと肩を揺らしてしまった。恐らく監督も同じだろう。
そんな威圧感たっぷりの誉の表情はきらきら輝くようなものだった。おかえり! とにこにこしながら挨拶をするものだから、密と監督は思わず顔を見合わせた。これは、何かあるだろう。
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ボッ、と音を立てて、御影密の背後で枯れ草が発火した。小さかった種火は徐々に大きくなり、やがて燃えるだけの材料さえもなくなると、黒い煙を出して消える。からからに乾燥した空気に、照りつける太陽が容赦なく降り注ぐから、燃えやすいものはみんなこうなるのだ。ゆらゆらと遠くで陽炎が揺れる。作り物の汗が頬を伝うのが鬱陶しかった。長い前髪が顔に張り付く。
密は、こんな所まで人に似せなくても良かったんじゃないか、と思っていた。温暖化を予想した科学者によって、暑さにはめっぽう強く作られているのだ。だったら熱を下げるための生体反応まで付属する必要があったのか、密には甚だ疑問である。元にこんな環境でもケロリとしていられるのだ。
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可燃性の街

2018年06月01日

また来た。
密はうんざり、といった表情を見せた。遠くから鼻歌が聴こえてくる。十中八九、あの男に違いなかった。
捕まったらきっと面倒だ。前だって、散々よく分からない詩を披露された。人形のような顔をしているくせに、口だけはペラペラとよく回る、妙な男なのだ。
さっさと退散しよう。そう思って、密はゴミの山から立ち上がった。今日の収穫はまだなかったけれど、仕方ない。あの男が去ってから、金になりそうな物を探せば良いのだ。幸いにして時間はいくらでもある。
ところが、ガラガラ! という音と、ぎにゃあ! という素っ頓狂な叫び声がしたので、密はビクリと動きを止めた。カラカラ、と空き缶が転がっていく音が響いた。それから、密ははぁ、と溜息をつく。
「ほんとさぁ」
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恒星たちの夜

2018年06月01日

『イナズマイレブン』二次創作小説 カップリング要素無し ブレイク組 2018年5月15日

対価に呼吸を

2018年06月01日

「あれ、密くん、ワタシの万年筆を知らないかい」
机の周りをきょろきょろ見回して、誉は首を捻っている。その様子を見て、密は呆れたように溜息をついた。もう、何度目のやり取りだろう。
「それなら、さっき出かけたとき、棚の上に置いてたでしょ」
「──ああ、そうだったね。ありがとう密くん」
助かったよ、と言いながら、誉は棚から万年筆を手に取った。つい数分前、他でもない自分がそこに置いたというのに。最近のアリスは、なんだか上の空だ。元来物を大切にする人であるのに、失くし物が増えた。どうやら、詩の制作が行き詰まっているらしい。
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