演出家の運命論について
御影密の覚醒には時間がかかる。眠りにつくのは一瞬だけれど、目を覚ますのには随分時間を要するのだ。マシュマロを与えて、肩をつついて、なんとか浮上した意識を保たせる。やっと起きたと思ったら、やっぱり眠気に敵わずに、再び眠ってしまうのが常だった。
そういうわけで、御影密が目を覚ましてすぐに意識を覚醒させることはほとんど無いことなのだ。
だから、「有栖川が倒れた」と顔を真っ青にして丞が知らせた時、文字通り飛び起きた密は、後にも先にも例がない。
さて、天才にはドレスコードがある。それは、えてして生涯を短く終える、ということだ。短命とはその有り余る才能への対価なのかもしれないけれど、あくまで「自称」天才だからだろうか。有栖川誉は二十七クラブにめでたく追加されかけて、しかしなんとか一命を取り留めたらしい。...